ノボノルディスクは、世界3位の製薬会社です。糖尿病患者向けのインスリンを開発する企業は3社しかなく、ノボノルディスクは最大の独占企業です。糖尿病患者は世界で増え続けているため、ノボノルディスクに投資すれば利益を得られるのでしょうか?
- 「世界のインスリン市場の46%を独占している…」
- 「糖尿病患者は19年に4.6億人、45年に7億人になる…」
- 「営業利益率は40%もあるが、PER28倍は割安なのだろうか…」
個人的には、ノボノルディスクは投資したい銘柄ではありません。
なぜならば、世界中で薬価引き下げ圧力があり、製薬会社の売上高は伸びていないからです。ノボノルディスクが優良企業なのは間違いないが、将来の成長率を考慮するとPER28倍は少し割高に見えます。
売上高の半分を占める米国市場では、ライバル企業や政治的な値下げ圧力で伸びていません。20年3Qの伸び率はわずか2%だけです。また、成長が期待される中国市場でも、19年に新薬の平均61%の値下げに応じました。
糖尿病患者が増えるのは間違いないが、売上高の伸び代は大きくはないです。
- ノボノルディスクの4半期決算(2020年7-9月)は?
- ノボノルディスクの過去10年間の売上高や営業利益は?
- 営業利益率43%、PER28倍は割安なのか?
記事の内容を簡単に知りたい
ノボノルディスクの10年間の四半期決算は?

ノボノルディスクの四半期決算を紹介します。
20年1Qの決算(2020年3月31日)
- 売上高:338億DKK(+16%)
- Diabetes and Obesity care total:285億DKK(+15%)
- Total insulin:159億DKK(+3%)
- Total GLP-1:194億DKK(+40%)
- Biopharm total:99億DKK(+14%)
- 営業利益:163億DKK(+14%)
- 純利益:118億DKK(+14%)
- 1株当たり利益:5.05DKK(+16%)
20年2Qの決算(2020年6月30日)
- 売上高:638億DKK(+8%)
- Diabetes and Obesity care total:539億DKK(+8%)
- Total insulin:295億DKK(−3%)
- Total GLP-1:194億DKK(+30%)
- Biopharm total:99億DKK(+8%)
- 営業利益:301億DKK(+9%)
- 純利益:225億DKK(+12%)
- 1株当たり利益:9.58DKK(+14%)
20年3Qの決算(2020年9月30)
- 売上高:948億DKK(+6%)
- Diabetes and Obesity care total:802億DKK(+6%)
- Total insulin:429億DKK(−4%)
- Total GLP-1:300億DKK(+29%)
- Biopharm total:145億DKK(+3%)
- 営業利益:439億DKK(+6%)
- 純利益:328億DKK(+9%)
- 1株当たり利益:14D KK(+10%)
1923年に設立されたノボノルディスクは、デンマークに本社を持つ世界的な製薬会社です。売上高は世界3位の規模を持ち、糖尿病患者向けにインスリンを開発します。インスリン市場は3社が独占し、ノボノルディスクは世界1位のシェアを持ちます。
20年3Qの売上高は前年比6%増で948億DKK、営業利益は6%増で439億DKKでした。糖尿病を含む肥満関連の治療薬が売上高の8割を占めます。インスリンの売上高は縮小するも、GLP-1という治療薬が急激にシェアを伸ばしています。
20年1Qに売上高が16%増だったのは、コロナによる都市封鎖の影響です。
都市封鎖や外出規制で糖尿病患者が、インスリンを買いだめしたからです。2Qや3Qでは売上高は落ち着き、6〜8%の従来の成長率に戻しています。
20年4Qの決算(2020年1月)
2021年1月29日に公開予定。
では、ノボノルディスクの売上高や営業利益の10年間の推移はどうでしょうか
ノボノルディスクの10年間の損益計算書は?

1981年に0.3ドルで、NYSEに上場しています。その後は、安定して株価を伸ばし高値を更新し続けています。コロナ後の20年10月は、65ドル前後で推移しています。
では、ノボノルディスクの売上高と営業利益はどうでしょうか?
その1:売上高と営業利益の10年間の推移は?

過去10年間の決算書を見ると、成長率は小さいが安定している事が分かります。営業利益率は43%を超えていて、超優良企業である事を示しています。大手製薬会社の売上高横ばいが続く中で、十分に検討している数値だと言えます。
その2:BPSとEPSの10年間の推移は?

過去10年間のBPS(1株あたり純資産)とEPS(1株あたり純利益)も、順調に伸びている事が分かりますね。ノボノルディスクは自社株買いを行っているため、1株あたりのEPSは常に上昇しています。
その3:営業CFと投資CFの10年間の推移は?

過去10年間の営業CFもフリーCF(営業CF−投資CF)も、一貫して上昇傾向にあります。製薬会社にも関わらず、ノボノルディスクは研究費用が少ないです。新薬は開発しているが、基本的には専門分野である糖尿病患者向けに特化しているからです。
営業利益やEPS、フリーCFをみて分かる通り間違いなく優良企業ですね。では、私たちはどのように、ノボノルディスクを投資判断したら良いのでしょうか?
ノボノルディスクに投資する上で注目すべきポイントは?

ノボノルディスクに投資する上で注目すべきポイントを紹介します。ノボノルディスクはインスリンをメインで開発する会社です。そのため、世界で糖尿病患者が増えれば、ノボルノディスクの売上高も増えます。
注目1:製薬会社ランキング3位で474億ドル?
19年12月期決算の売上高ランキングです。
世界最大の製薬会社はスイスのロシュで618億ドルです。2番手に米国ファイザーで517億ドル、3番手にデンマークのノボノルディスクで474億ドルと続きます。
インスリン開発は技術的なハードルが高く、競合社は3社だけです。売上高7位の仏サノフィと14位の米国イーライリリーです。売上高はそれぞれ404億ドルと223億ドルです。
では、ノボノルディスクはどれくらいの市場シェアあるのでしょうか?
注目2:世界のインスリン市場の46%を独占してる?

ノボノルディスクは、世界で46%のシェアを獲得しています。
シェアが最も高いのは、アフリカなどの中東地域で55%、中国53%、日本と韓国50%と続きます。北米のシェアが39%と低いのは、競合企業の米イーライリーがシェアを伸ばしてるからです。米国を始め、どこの国でも価格引き下げ圧力があります。
では、イーライリーはどれくらいシェアを伸ばしているのでしょうか?
注目3:米イーライリリーが急激にシェアを奪う?
糖尿病を含む、肥満ケアセグメントの市場シェアです。
肥満ケアセグメントは、ノボノルディスクが27%のシェアがあります。しかしながら、米イーライリリーが勢いよくシェアを伸ばしている様子が分かりますね。対して、3番手の仏サノフィと4番手の米メルクはシェアを落としています。
イーライリリーは、3番手と4番手のシェアを奪うことで成長しています。では、世界ではどれくらい糖尿病患者がいるのでしょうか?
注目4:19年の世界の糖尿病患者は4.63億人?
世界中で糖尿病患者は増え続けています。
2019年の糖尿病患者は、世界で4.63億人もいます。19年前と比較して3倍も増加し、30年には5.78億人に増えます。11人に1人が糖尿病、65歳以上の5人に1人が糖尿病です。
世界で最も糖尿病患者が多いのは中国で1億1640万人です。次にインドの7700万人、米国で3100万人と続きます。糖尿病の医療費が多い国は、米国で32兆円、中国で11.8兆円、ブラジルで5.7兆円、ドイツで4.8兆円、日本で2.6兆円です。
地域別で見ると、途上国の方が増加率が多いことが分かります。アフリカの45年までの増加率は143%増、中東・北アフリカ地域は96%増、東南アジアは74%増です。

では、ノボノルディスクの地域別の売上高はどうでしょうか?
注目5:米国市場の売上高が47%を占める?

(百万DKK) | 18Q4 | 19Q4 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|
米国 | 54,488 | 57,486 | 6% | 47% |
ヨーロッパ | 21,679 | 23,262 | 7% | 19% |
中東・アフリカ | 12,153 | 14,089 | 16% | 11% |
中国 | 11,285 | 12,844 | 14% | 10% |
日本・韓国 | 5,797 | 6,453 | 11% | 5% |
南米 | 4,009 | 4,916 | 23% | 4% |
合計 | 111,831 | 122,021 | 9% | – |
2019年度の地域別売上高と前年比推移です。
ノボノルディスクの売上高は、米国市場が最も大きく47%を占めています。しかしながら、前年比伸びは最も小さく6%しか成長していません。20年3Qでは、米国市場の伸びは2%に止まります。
米国や欧州とは反対に、シェアが10%前後の途上国の伸び率は大きいです。南米は23%、中東やアフリカ地域は16%、中国は14%ですね。糖尿病患者の伸び率が高い地域で、ノボノルディスクの伸び率も高いことが分かります。
米国で売上が伸びない理由は、競合他社の存在と薬の値下げ圧力です。
薬価の引き下げは、成長市場である中国でも同様です。中国国家医療保障局は19年11月に、ロシュやノバルティスの医薬品を保険対象とする代わりに、一部新薬の価格を平均61%引き下げることに合意したと発表しています(参考:製薬大手が中国で新薬を大幅値下げ)
大幅な薬価引き下げで、他市場も追従する可能性があります。そうなると、売上高が伸びても利益率が低下する事になります。
では、ノボノルディスクの売上高はどのように推移してきたのでしょうか?
注目6:売上高6〜8%で成長を続ける安定企業?
ノボノルディスクの四半期毎の売上高推移です。
ノボノルディスクに限らず、近年の製薬会社の売上高は横ばいが続いています。安価なジェネリック薬品の台頭と各国で政治的な値下げ圧力があるからです。そんな中でも、世界中で糖尿患者が増え続けているため、ノボノルディスクは健闘しています。
20年1Qに売上高が大きく伸びた理由は、コロナの影響です。
都市封鎖や外出規制を見越して、糖尿病患者が買いだめに動いたからです。コロナが落ち着いた20年2Qや3Qは、再び6〜8%の成長率に戻っています。
今後もノボノルディスクは8%前後で推移すると予想します。薬価値下げ圧力があるも、世界中で糖尿病患者が増え続けているからです。現代の食生活を考えると、糖尿病患者が減少することは当分なさそうです。
投資家はノボノルディスク株を購入するべきか?

- 営業利益率は43%と高いが、売上高はひと桁成長である
- 米国が売上の47%を占めるが、競合にシェアを奪われている
- 20年3Qの米国市場の売上伸び率は、2%しかない
- 19年11月に、中国で薬価格の平均61%の引き下げに応じた
- PERは28倍と割高だが、将来的な成長性は大きくはない
ノボノルディスクは、インスリンで世界市場の46%を独占する会社です。糖尿病患者は世界中で増加傾向にあり、19年には4.63億人、45年には7億人に増えると言います。糖尿病患者が増え続ける限りは、ノボノルディスクの需要も高くなる一方ですね。
しかしながら、個人的にはノボノルディスクは投資したい銘柄ではありません。
なぜならば、世界中で薬価引き下げ圧力があり、製薬会社の売上高は伸びていないからです。ノボノルディスが優良企業なのは間違いないが、将来の成長率を考慮するとPER28倍は少し割高に見えます。
また、成長が期待される中国市場で、値下げを受け入れた事もマイナス材料です。
医薬品を保険対象とする代わりに、ノボノルディスは平均61%の値下げに応じています。中国だけ安価で販売する訳にはいかないため、他国も追従する可能性があります。そうなると、売上げを伸ばす事に成功しても利益率の減少は避けられません。
市場独占の優良企業だが、割高な状態で購入するべきではないですね。
まとめ:ノボノルディスク株の四半期決算は?

- 1923年にデンマークで設立、世界3位の製薬会社である
- インスリン市場で、世界の46%を独占している
- 糖尿病患者は19年に4.6億人、45年に7億人に増える
- 営業利益率は43%と高いが、売上高はひと桁成長である
- 20年3Qの米国市場の売上伸び率は、2%しかない
- PERは28倍と割高だが、将来的な成長性は大きくはない
個人的には、ノボノルディスクは投資したい銘柄ではありません。
なぜならば、世界中で薬価引き下げ圧力があり、製薬会社の売上高は伸びていないからです。ノボノルディスクが優良企業なのは間違いないが、将来の成長率を考慮するとPER28倍は少し割高に見えます。
売上高の半分を占める米国市場では、ライバル企業や政治的な値下げ圧力で伸びていません。20年3Qの伸び率はわずか2%だけです。また、成長が期待される中国市場でも、19年に新薬の平均61%の値下げに応じました。
ただし、世界的に糖尿病患者が増え続けるのは間違いありません。特に途上国での伸び率は、先進国よりも遥かに高いです。今後のノボノルディスクの業績は注視するべきですね。
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