TSMC(台湾積体電路製造)の四半期決算|コロナでも2桁成長?

世界中の半導体を受託生産するSMTC(台湾積体電路製造)は、クラウドや人工知能、5GやIoT、完全自動運転の恩恵を最も受ける企業かもしれません。コロナ直後でも決算は好調で、大型株にも関わらず株価は半年で2倍にも拡大しました。私たち投資家は、5G特需に期待してSMTC株を購入すべきでしょうか

  • 「クラウドや人工知能、5GやIoT特需が期待できる銘柄だ…」
  • 「コロナ後でも需要は変わらず、株価は半年で2倍に爆上げした…」
  • 「株価は2倍でもPER24倍、まだまだ割安に放置されている…」

コロナ危機にも関わらず、SMTCの売上高は1Q(1-3月期)も2Q(4-6月期)も好調でした。1Qの売上高前年比は42%増、コロナが直撃した2Qでも28%増と予想を超える大幅な増収増益でした。成長が鈍化した半導体業界だが、2020年以降はテクノロジの需要増を受けて、再び拡大する可能性が高いです。

しかしながら、個人的には長期で保有したい銘柄ではありません。

なぜならば、受託生産市場で46%を占めるSMTCも、米中貿易摩擦でどれくらい影響を受けるか不明だからです。米中貿易摩擦の影響次第では、業界の将来像が大きく変わる可能性も潜んでいます。例えば、中国政府が香港のように強引に台湾政府を抑えつける可能性もありますね。

TSMCの政治的なリスクが高くなれば、韓国サムソンや米国グローバルファウンダリーズが台頭するかもしれません。半導体市場が成長するのは確実だけども、1社に限定して投資するのは避けたいですよね。

2020年後半にトランプ政権が敗退しても、安全保障に関連する問題なので変わりません

TSMC株の投資判断したい人向け
  1. TSMC直近の4半期決算(2020年4〜6月)は?
  2. TSMCの過去10年間の売上高や営業利益は?
  3. 5G特需の半導体メーカーだが、まだ不確実性が高い理由は?

TSMC(台湾積体電路製造)の四半期決算は?

TSMCの四半期決算を紹介します。

第1Q決算(2020年4月)

第1Q決算の内容は...
  1. 売上高:3105億台湾ドル(前年同期比+42%
  2. 営業利益:1285億台湾ドル(+100%
  3. 純利益:1170億台湾ドル(+90%)
  4. 一株利益:4.51台湾ドル(+90%

第2Q決算(2020年7月16日)

第2Q決算の内容は...
  1. 売上高:3106億台湾ドル(前年同期比+28%
  2. 営業利益:1310億台湾ドル(+71%
  3. 純利益:1208億台湾ドル(+81%
  4. 一株利益:4.66台湾ドル(+81%

TSMCは、世界中の半導体企業のファウンドリ(受託生産)として知られています。受託生産市場では、世界の46%のシェアを誇ります。

コロナが直撃した4〜6月期の決算でしたが、TSMCは予想を超える好決算でした。

2Q売上高は前年比28%増で3106億台湾ドル、営業利益は71%増で1310億台湾ドルです1Q売上の前年比42%増よりも小さいが、コロナ環境下では十分すぎるほどの成長と言えます。売上高の成長を牽引したのは、クラウド向けで好調の高性能PC向けの半導体です。

2019年に不況に陥った半導体業界だが、20年には大きく回復すると言われています。コロナ危機は一時的な不況である事を考えると、3Qや4Qも売上高を大きく伸ばす可能性は高いですね

第3Q決算(2020年10月)

2020年10月に公開予定。

では、TSMCの売上高や営業利益の10年間の推移はどうでしょうか?

TSMC(台湾積体電路製造)の10年間の損益計算書は?

2008年に10ドルだったTSMCの株価は、2020年には7.7倍の77ドルまで急成長していますね。TSMCに100万円を投資すれば、770万円まで増えていた事になります。では、過去10年間にどのように成長してきたのでしょうか?

TSMCの損益計算書やキャッシュフローを紹介します。

その1:売上高と営業利益の10年間の推移は?

過去10年間の決算書を見ると、半導体市場の成長と共に順調に売上高を伸ばしている事が分かります。売上高は過去10年間で2.5倍も成長していますね。また、売上高と同様に、営業利益や純利益を伸ばしている点も評価できます。営業利益率は35%と高く、安定している事が分かりますね。

その2:BPSとEPSの10年間の推移は?

過去10年間のBPS(1株あたり純資産)とEPS(1株あたり純利益)は、安定して成長しています。BPSもEPSは、今後も伸びていく可能性が高いです。なぜならば、5GやIoT、人工知能やクラウド、完全自動運転など、半導体市場はまだまだ拡大する余地が高いからです。

その3:営業CFと投資CFの10年間の推移は?

営業CFは安定して増えているが、フリーCF(営業CF−投資CF)は安定しているとは言えないですね。ファウンドリ企業として、世界中の半導体メーカーから受託生産するSMTCは、膨大な設備投資が必要になります。2020年は、半導体の需要拡大を予想して投資CFが増えています

膨大な設備投資や研究開発が必要な点は、ファウンダリ企業の不安材料としてありますね。では、SMTC株に投資する上で、私たち投資家はどのような点に注目すれば良いのでしょうか?

TSMCに投資する上で注目ポイントは?

SMTCに投資する上で、注目すべき点を紹介します。

注目1:世界3位の半導体メーカで世界1位の受託生産?

参考:2019年半導体企業ランキング、Intelが首位返り咲き

2019年の半導体企業の売上高では、TSMCは世界3位の半導体メーカーです

1位インテルの売上高は698億ドル、2位はサムソンで517億ドル、3位はTSMCで345億ドルです。2018年の売上高と比較すると、サムソンをはじめ多くの半導体メーカーが売上高を落としていますね。売上高が大きく落ち込んだ理由は、世界中でスマホの販売不振が大きいです

世界中の下請け企業であるTSMCは、不調な2019年でもプラス成長を維持しています。

また、 TSMCは半導体受託生産で世界1位のメーカーでもあります。TSMC1社だけで、世界の46.3%のシェアを占めます2番手は米国のグローバルファウンダリーズで9.9%、3番手がサムソンで9.2%しかありません。半導体受託生産としては、不動の地位を手に入れています(参考:台湾TSMC、独り勝ち)。

では、TSMC製品別の売上高比率を見てみましょう。

注目2:スマホと高性能PCで売上高の80%を占める?

参考:2Q20 Revenue by Technology(TSMC)-2020/07/16

TSMCが提供する製品の割合と、前四半期の成長率です。

TSMCが製造する製品で多いのは、スマートフォンと高性能PCで全体の80%を占めます。IoTや完全自動運転の半導体が期待されているが、実際にはまだまだ伸びていない事が分かりますね。また、前四半期の成長率を比較すると、伸びている分野は高性能PCだけです。

高性能PCの需要が高い理由は、クラウド事業社からの需要が高いからです

好調なクラウド事業とは対照的に、2019年はスマホの販売不振や米中貿易摩擦の影響で12.1%のマイナス成長でした。2020年はプラス5.4%の成長率が期待されていたが、コロナの影響で先が見通せない状況です。2020年は5GやIoTで期待されるも、現時点では高性能PC以外の需要は高くない点に注意が必要ですね

では、TSMCはどれくらい競争力が高いのでしょうか?

注目3:7nmプロセスが売上高の7割を占める?

参考:2Q20 Revenue by Technology(TSMC)

TSMCは、世界市場の46%を独占する半導体のファウンドリー(受託生産)です。

TSMCが世界中に半導体メーカーに選ばれる理由は、高い技術力があるからですね。TSMCは、微細化の最先端技術で、米国のインテルや韓国のサムソンと競っています。TSMCとサムスン電子は7nm(10億分の1メートル)の半導体を量産し、次世代の5nmや3nmの開発をしています

その一方で、インテルはようやく10nmの量産に着手したところです。また、2020年2Q決算(7月)では、7nmの開発に遅れていることも発表しましたね。

TSMCの決算資料を見ると、すでに大量の7nm製品を市場に供給している事が分かります。また、2020年6月には、車載IC向けに世界初の7nm製造を発表しています。7nmの車載ICは、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に使われます。(参考:「世界初」TSMCが7nmの車載IC向け製造プロセス

では、TSMCはどれくらいのペースで成長しているのでしょうか?

注目4:コロナでも売上高成長率は+28〜42%もある?

TSMCの四半期毎の売上高推移と成長率です。

半導体市場全体がマイナス成長だった2019年でも、TSMCは順調に成長している事が分かります。2019年1Qで一時的にマイナス成長に陥るも、その後はすぐに回復していますね。2020年に入ると、クラウド向けの高性能PCが牽引しプラス42%成長まで伸ばしています

2020年2Qはコロナの影響で下がるも、それでもプラス28%の成長です

2018年以降のスマホ販売不振、米中貿易摩擦を乗り越えて成長できた点は高く評価できますね。コロナ危機が落ち着き市場が回復すれば、成長率はさらに拡大する可能性が高いです。また、2020年後半や2021年には、5GやIoT特需もあり、TSMCの売上高を押し上げる可能性は高いです

2020年2Qの決算発で、追加の設備投資も発表しています。では、TSMCの地域別の売上高を見てみましょう。

注目5:地域別の売上高は米国だけで58%を占める?

地域別売上高 20Q2 20Q1 19Q2
北アメリカ 58% 56% 61%
中国 21% 22% 17%
アジア太平洋 10% 11% 10%
欧州、中東 6% 6% 6%
日本 5% 5% 6%

TSMCの海外売上高を見ると、米国市場が全体の58%を占めます。

台湾メーカーにも関わらず、中国の売上高比率は意外と多くはありません。米国に市場に次いで、中国が21%、アジア太平洋、欧州と中東地域、最後に日本市場がきます。前年度と比較すると、売上割合が伸びている地域は中国です

では、TSMCはどれくらい貿易摩擦の影響を受けるのでしょうか?

注目6:米中貿易摩擦で売上高が14%も落ちる?

参考:米中対立、半導体受託大手のTSMCに試練

半導体業界に投資する上では、米中貿易摩擦の影響を考える必要がありますね。

米国企業と同盟国は、ファーウェイへの輸出が禁止されています。地域別の売上比率を考えると、TSMCが米国の意向に従うのは避けられません。中国の売上比率が21%あるが、米国企業は58%も占めていますただし、米国の経済政策に従う場合は、中国からの報復を受ける可能性も十分にありますね。

また、ファーウェイはTSMCの上顧客で、売上高の14%を占めています現在はまだファーウェイに半導体を供給しているが、2020年後半からは禁止されます。また、TSMCは総額約120億ドルかけて米アリゾナ州に半導体工場を新設すると発表し、米国政府に1歩歩み寄った事になります(参考:台湾、貿易戦争巻き添え)。

これを受けて、中国政府も何か対策する可能性もあります。

半導体市場全体で見れば、2020年以降は市場が拡大するのは間違いないです。しかしながら、米中貿易摩擦など、半導体業界の見通しを予測するのは難しいですね。

投資家はTSMC株を購入するべきか?

TSMC株を購入すべきでない理由は...
  1. 前年比2桁成長するも、貿易摩擦のリスクは無視できない
  2. 貿易摩擦が深刻化した場合、競合他社に市場を奪われる可能性がある
  3. 生産委託市場で46%を占めるも、サムソンと技術的な差は大きくない
  4. 輸出が禁止されたファーウェイは、売上高の14%を占めている
  5. トランプ政権が選挙で負けても、貿易摩擦は変わらない

半導体業界が右肩上がりで成長するならば、TSMC株はその恩恵を最も受ける可能性が高いですね。2020年現在は、クラウド関連で高性能PCの需要が高いが、5GやIoT特需でスマホ向けや自動車、IoT向けの半導体も大きく伸びる可能性が高いです。

しかしながら、個人的には長期で保有したい銘柄ではありません。

なぜならば、米中貿易摩擦でどれくらい影響を受けるのか分からないからです中国政府が香港のように強引に台湾政府を抑えつける可能性も否定はできません。そうなると、TSMCの代わりに、韓国サムソンや米国グローバルファウンダリーズが生産委託の市場シェアを奪う可能性もあります。

2020年後半にトランプ政権が敗退しても、安全保障に関連する問題なので変わりません

半導体業界が不調な2018年でも、TSMCガ力強く成長している点は好感できます。しかしながら、貿易摩擦のリスクは今も顕在している点に注意が必要ですね。

まとめ:TSMC(台湾積体電路製造)の四半期決算は?

TSMC株の注目ポイントは...
  1. 世界3位の半導体メーカー、世界1位の受託生産である
  2. 半導体の受託生産では、業界シェアの46%を占めている
  3. 2桁成長で売上高を伸ばし、営業利益率も35%以上と高い
  4. コロナ後も2桁成長を維持してるが、貿易摩擦のリスクは無視できない
  5. 貿易摩擦が深刻化した場合、競合他社に市場を奪われる可能性がある
  6. 生産委託市場で46%を占めるも、サムソンと技術的な差は大きくない
  7. 輸出が禁止されたファーウェイは、売上高の14%を占めている
  8. トランプ政権が選挙で負けても、貿易摩擦は変わらない

コロナ危機にも関わらず、SMTCの売上高は1Q(1-3月期)も2Q(4-6月期)も好調でした。1Qの売上高前年比は42%増、コロナが直撃した2Qでも28%増と予想を超える大幅な増収増益でした。成長が鈍化した半導体業界だが、2020年以降はテクノロジの需要増を受けて、再び拡大する可能性が高いです。

しかしながら、個人的には長期で保有したい銘柄ではありません。

なぜならば、受託生産市場で46%を占めるSMTCも、米中貿易摩擦でどれくらい影響を受けるか不明だからです。米中貿易摩擦の影響次第では、業界の将来像が大きく変わる可能性も潜んでいます。例えば、中国政府が香港のように強引に台湾政府を抑えつける可能性もありますね。

TSMCの政治的なリスクが高くなれば、韓国サムソンや米国グローバルファウンダリーズが台頭するかもしれません。半導体市場が成長するのは確実だけども、1社に限定して投資するのは避けたいですよね。

2020年後半にトランプ政権が敗退しても、安全保障に関連する問題なので変わりません

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