シノプシスの四半期決算|5G特需でもリスクが高い理由は?

シノプシス社は、半導体メーカーにEDAを提供する会社です。あまり知られてないが、間接的に5GやIoTの恩恵を受ける会社でもあります。しかしながら、米中貿易摩擦の影響を受けて、2019年以降は若干低迷していますでは、私たち投資家はシノプシス社に投資するべきでしょうか?

  • 「PERは58倍だが、5G特需で恩恵を受ける銘柄だ…」
  • 「5G銘柄としても知られるが、どれくらい恩恵を受けられるのか…」
  • 「2018年は低成長だが、5Gの恩恵を受けて爆上げするはずだ…」

EDA(電子設計自動化ツール)を半導体メーカーに提供するシノプシス社は、間接的に5GやIoTの恩恵を受ける銘柄として人気を集めています。半導体業界は、通信業界の5GやIoT、クラウドや人工知能、完全自動車の恩恵を受けて急拡大しています

しかしながら、個人的にはシノプシス株は長期で保有したい銘柄ではありません。

なぜならば、2019年以降に成長率が鈍化しているからです。2018年以前に20%だった成長率は、2019年に7%、2020年に3%と下落しています。低迷している原因は、他の半導体メーカーと同様に米中貿易摩擦の影響を受けている可能性が高いです。

また、シノプシス社に楽観的になれない理由はもうひとつあります。

シノプシス社とは対照的に、EDA2番手ケイデンス社の売上が伸びている事です米中貿易摩擦の影響だけではなく、ケイデンス社に市場シェアを奪われている可能性もあります。EDAベンダーに投資するならば、業界2番手のケイデンス社に投資した方が安全かもしれないですね。

シノプシス株の投資判断したい人向け
  1. シノプシス直近の4半期決算(2020年2〜4月)は?
  2. シノプシスの過去10年間の売上高や営業利益は?
  3. 5G特需を受けるソフト会社だが、不確実性が高い理由は?

シノプシス(SNPS)の四半期決算は?

シノプシスの四半期決算を紹介します。

第1Q決算(2020年2月20日)

第2Q決算の内容は...
  1. 売上高:8.34億ドル(前年比+1.7%
  2.  Time-based products:5.56億ドル(+0.5%
  3.  Upfront products:1.50億ドル(+15.3%
  4.  Maintenance and service:1.27億ドル(−6.7%)
  5. 営業利益:0.87億ドル(−41%)
  6. 純利益:1.04億ドル(−33%)
  7. 一株利益:0.67ドル(−44%)

第2Q決算(2020年5月20日)

第2Q決算の内容は...
  1. 売上高:8.61億ドル(前年比+3%)
  2.  Time-based products:5.9億ドル(+5%)
  3.  Upfront products:1.29億ドル(−10%)
  4.  Maintenance and service:1.41億ドル(+5%)
  5. 営業利益:1.25億ドル(+8%)
  6. 純利益:1.09億ドル(−8%)
  7. 一株利益:0.71ドル(−8%)

シノプシス社は、半導体メーカーにEDAツールを販売するソフトウェア社です。EDAツールとは、集積回路や電子機器など電気系の設計作業の自動化を支援します。EDAツールを導入する事で、設計や開発コストを削減でき、市場投入までの期間を短縮できます

EDA業界で3社が独占状態にある中で、シノプシス社は業界1位のソフトメーカーです。

2Qの売上高は前年比3%増で8.61億ドル、営業利益は8%増で1.25億ドルです。しかしながら、純利益は1.08億ドルでマイナス8%でしたコロナが直撃した1Qよりも改善できたが、純利益はマイナス成長が続いていますね。

第3Q決算(2020年8月19日)

2020年10月に公開予定。

では、シノプシス社の売上高や営業利益の10年間の推移はどうでしょうか?

シノプシスの10年間の損益計算書は?

2008年に21ドルだったシノプシス社の株価は、2020年には9.4倍の198ドルまで急成長していますね。シノプシス社に100万円を投資すれば、940万円まで増えていた事になります。では、過去10年間にどのように成長してきたのでしょうか?

シノプシスの損益計算書やキャッシュフローを紹介します。

その1:売上高と営業利益の10年間の推移は?

過去10年間の決算書を見ると、売上高は順調に拡大している事が分かります。また、営業利益率も安定している上に、若干の上昇傾向にあります。ただし、2019年以降は貿易摩擦の影響で、成長率が低迷し始めている点には注意が必要です

また、営業利益率は安定しているが、利益率は16%とそこまで高くはありません。EDA業界2番手のケイデンス社は20%を超えて上昇傾向にあります

その2:BPSとEPSの10年間の推移は?

過去10年間のBPS(1株あたり純資産)とEPS(1株あたり純利益)は安定して推移しています。ただし、2019年以降は成長率が鈍化傾向にあるため、EPSの動向は注視した方が良いですね。

その3:営業CFと投資CFの10年間の推移は?

営業CFとフリーCF(投資CF−営業CF)を見ると、安定して推移している事が分かりますね。ソフトウェアを開発するシノプシス社は、半導体メーカーと違い大規模な設備投資や研究開発が必要ではありません。高いキャッシュを稼ぎ出しているのは、競争優位性が高いビジネスだからですね。

決算書とは対照的に、キャッシュフローは2019年以降で大きく改善していますね。では、シノプシス株に投資する上で、どのような点に注目すれば良いのでしょうか?

シノプシスに投資する上で注目ポイントは?

シノプシスに投資する上で、注目すべきポイントを紹介します。

注目1:EDAで業界1位でIPベンダーで2番手にいる?

EDAベンダーの大手3社とは...
  1. 1位:シノプシス(Synopsys)
  2.  → 論理合成ツールに強く、開発工程の下流で使われる
  3. 2位:ケイデンス・デザイン・システムズ(Cadence Design Systems)
  4.  → シミュレーションに強く、開発工程の上流で使われる
  5. 3位:メンター・グラフィックス(Mentor Graphics)
  6.  → 電子回路基板設計ソリューションで業界1位

EDA(Electronic Design Automation)とは、半導体や電子機器の設計作業を自動化で行うこと、またはそのツールやソフトウェアを指します。EDAベンダーは、電子設計を自動化するツールを半導体メーカーに提供する事で利益を得ています

シノプシスは、EDAで業界1位のベンダー企業です。

シノプシスのEDAツールは、半導体開発工程の下流で使われる事が多いです。対して、業界2番手のケイデンスはシミュレーションソフトに強く、上流工程の設計サービスを提供しています。同じEDA業界でも対応領域は異なり、完全な競合他社ではありません。

また、 EDAベンダーは経済的な堀があり競争優位性が高い分野でもあります。

EDAツールの開発は、レベルが高く専属エンジニアを育てるのが難しいです。シノプシスの社員の平均年収は14.4万ドル(1,526万円)で、米国高給ランキングですまた、業界2番手のケイデンスの年収は15.6万ドルで5位です。高給な理由は、優秀な社員を囲い込み独立を防ぐためでもあります。

これだけ給料が高いと、新規参入社がEDA開発を始めるのは難しいですよねでは、シノプシスの売上高はどのように推移してきたのでしょうか?

注目2:貿易摩擦とコロナで売上高成長率は3%まで下落?

シノプシスの売上高推移を見ると、順調に推移している事が分かります。

しかしながら、2019年以降は成長率が鈍化傾向にある点は注意が必要ですね2019年に成長率が落ち込んだ理由は、米中貿易摩擦の影響が大きいかも知れません。日本を含まないアジア圏の売上高は21%あります。また、2020年には、2-3%まで落ち込んでいます。

コロナの影響で、需要が一時的に減少している可能性がありますね。では、シノプシス社の事業別の売上高を見てみましょう。

注目3:売上高の6割を占めるEDAが減少傾向にある?

事業別の売上高を見ると、成長が鈍化している元凶が分かりますね。

シノプシス社の売上比率はEDAツールで6割、半導体IPビジネスで3割、残り1割がソフトウェア品質やサポートです。EDAツールは業界1位、半導体IPビジネスはソフトバンクに買収されたARM社に次いで業界2位です。

過去3年間の推移を見ると、EDAツールの売上高比率が2年で7%も下落していますね。

EDAツールの売上高が落ちている原因は、競合他社によるシェアの拡大、それから米中貿易摩擦の影響が考えられます。米国政府は、米国企業とファーウェイの取引を禁止しているが、禁止する取引先を拡大しています。取引禁止の中には、半導体設計を支援するEDAツールも含まれますね(参考:米中分離が長期化するこれだけの理由)。

米中貿易摩擦が続けば、シノプシスの成長率が伸びない可能性が高いです。

注目:海外売上比率が高い米国とアジア市場が低迷?

地域別 売上高(百万ドル) 割合 Y/Y
アメリカ 404 46% -3%
ヨーロッパ 89 10% +6%
韓国 105 12% +25%
日本 80 9% +10%
アジアとその他 181 21% +1%

地域別の売上高比率を見ると、米国の売上が全体の46%を占めます。中国を含むアジアとその他が次に多く、全体の21%を占めます。

2019年以降の不調は、米国市場と中国を含むアジア地域の低迷が大きいですね。売上高が大きい米国とアジア地域は、前年比でそれぞれマイナス3%と1%の伸びです。米国とアジアとは対照的に、韓国と日本は大きく伸びていますね。米中貿易摩擦による中国の不調を、韓国や日本が吸収しているのかもしれません。

米中貿易摩擦が長引けば、成長が期待できる中国地域の売上高が増えないですね。

投資家はシノプシス株を購入するべきか?

シノプシス株を購入すべきでない理由は...
  1. 売上高は順調に拡大してるが、2019年以降は低迷している
  2. 売上高成長率は19年で7%、20年で3%まで下落した
  3. 営業利益率は安定しているが、20%を超えられていない
  4. 米中貿易摩擦の影響で、アジア地域の売上が減少傾向にある
  5. シノプシスとは対照的に、EDA業界2番手が売上を伸ばしている

個人的には、シノプシス株は長期で保有したい銘柄ではありません。

なぜならば、順調に売上高を拡大してきたが、2019年以降は成長率が大きく鈍化しているからです。2018年に20%だった成長率は、米中貿易摩擦が加熱した2019年で7%、コロナが直撃した2020年には3%まで下落しています。

低迷している原因は、中国への取引停止とライバルにシェアを奪われている可能性があります

EDA業界最大手のシノプシスが低迷する一方で、2番手のケイデンスは成長率が上向いています。同業者でも専門領域が違うが、ケイデンスが侵略している可能性もありますね。EDAツールに投資するならば、現時点ではケイデンスを保有した方が安心できますね

まとめ:シノプシス(ADI)の四半期決算は?

ブロードコム株の注目ポイントは...
  1. EDAベンダーは3社が独占状態で、1番手のソフト会社である
  2. 半導体メーカーに、集積回路や電子機器など設計作業の自動化をサポート
  3. 売上高は拡大するも、2019年以降は低迷している
  4. 営業利益率は16%と、業界2番手のケイデンス社よりも低い
  5. 米中貿易摩擦の影響で、アジア地域の売上が減少傾向にある

EDA(電子設計自動化ツール)を半導体メーカーに提供するシノプシス社は、間接的に5GやIoTの恩恵を受ける銘柄として人気を集めています。半導体業界は、通信業界の5GやIoT、クラウドや人工知能、完全自動車の恩恵を受けて急拡大しています

しかしながら、個人的にはシノプシス株は長期で保有したい銘柄ではありません。

なぜならば、2019年以降に成長率が鈍化しているからです。2018年以前に20%だった成長率は、2019年に7%、2020年に3%と下落しています。低迷している原因は、他の半導体メーカーと同様に米中貿易摩擦の影響を受けている可能性が高いです。

また、シノプシス社に楽観的になれない理由はもうひとつあります。

シノプシス社とは対照的に、EDA2番手ケイデンス社の売上が伸びている事です米中貿易摩擦の影響だけではなく、ケイデンス社に市場シェアを奪われている可能性もあります。EDAベンダーに投資するならば、業界2番手のケイデンス社に投資した方が安全かもしれないですね。

 

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